ドルコスト平均法はリスクを下げない

資産運用

ドルコスト平均法とは何か?

ドルコスト平均法とは資産運用にて使用される技法です。
毎月や毎年など一定期間に一定額の資産を継続して購入します。
例えば毎月投資信託であるオールカントリー(以下オルカン)を1万円ずつ購入することです。

ドルコスト平均法は特に初心者向けにお勧めされる方法で、その理由は2つあげられます。
第1に、購入価格を平均化することで高値づかみ安値逃しを避けることが出来ます。
第2に、リスクを下げられます。

しかしこの一般的な説明の第2のリスクを下げる説明に反し、事実としてドルコスト平均法はリスクを下げません。
それには次のように説明できます。
一括で1000万円購入したオルカンと、ドルコスト平均法で1000万円購入したオルカン。この2つのオルカンのリスクは異なるでしょうか。
当然この2つは同じオルカンですから、どちらも同じリスクです。
つまり一括やドルコスト平均法といった購入手法でリスクを下げる事は出来ません。どのような手法で買われようと1000万円のオルカンならそのリスクとリターンは同じなのです。

なぜリスクを下げると誤解されたのか

相対値と絶対値という2つのリスク

先の説明によって購入手法がリスクを左右しないことは明白ですが、ではなぜこの事実が誤解されたのでしょうか。
それは2つのリスクを混同したからと思われます。
その2つのリスクとは相対値と絶対値です。
相対値とは%のことです。基準となる値に対して相対的な位置を表します。
絶対値とは数字、この場合なら特に1万円など、その数値そのものが絶対的な位置を表します。

投資の世界においてリスクは一般的には%で表されます。
その場合先に説明したとおりオルカンのリスクは一括投資もドルコスト平均法も13です。(参照 5年間の標準偏差年率 2025/11末基準)です。
この13はオルカンが過去5年間約70%の確率で+-13%で合ったことを示しています。更に95%の確率で+-26%でもありました。
ここからだいたい1年間で26%の損失を覚悟する必要があることが分かります。もちろん場合によっては翌年更に下落することもあります。これはあくまでも1年間のリスクですから。

しかし人間は絶対値でも考えます。
この場合一括投資100万円分のリスクは先の説明から95%の確率で26万円損する可能性がありますが、もしドルコスト平均法でまだ50万円しか積み立てていなかった場合、そのリスクは半分の13万円になります。
すると一見するとリスクは26万円と13万円ですから、ドルコスト平均法の方がリスクが少ないと誤解してしまうのです。
しかしそれは一括投資やドルコスト平均法といった手法の問題では無く元本の問題です。
もし一括投資でも50万円だけならば、そのリスクは同じく13万円となるのです。

リスクを下げたと誤解する危険性

ドルコスト平均法を使っているからリスクを下げていると思っている方が世の中には多く見られます。専門家と見られる人たちでさえそう言うことがあります。
しかしこれまで説明してきた通りドルコスト平均法にリスクを下げる効果はありません。
どんな手法を使おうとも100万円は100万円分のリスクを取っており、50万円には50万円分のリスクを取っているのです。
にも関わらず自分はリスクを下げていると誤解する事がどんな危険を招くか。
それは暴落時に予想以上の下落を目の辺りにして狼狽売りすることであったり、過剰な資産を運用に回してしまうという危険を招くのです。
それは結局、皆さんの資産を痛めつけるのです。

投資において重要な事は自分にとって適切なリスクを取ることです。
それには自分がどの程度のリスクを取っているかを把握することが大事です。
積立だから、ドルコスト平均法だから、と安心するのでは無く、どの程度の確率でどれだけ損失を受けるのかをしっかりと把握しなければなりません。

リスクを下げるとはどういうことなのか

ではリスクを下げるとはどういうことなのか。
投資の世界において%で考えるのが一般的だと説明しましたが、これはつまり先のオルカンの場合、リスクである95%の確率で+-26%になることを+-25%に減らすことができればをリスクを下げると言います。
更に付け加えればリターンはそのリスクの減少よりも小さくなければなりません。
なぜリターンを下げないのかと言えば、リターンをリスクと同じだけ下げて良いなら、既に説明したとおり100万円を50万円のオルカンと50万円の現金にすれば、この資産全体のオルカンの割合は100%から50%に下がったことからリスクとリターンは共に半分に出来るからです。つまりリターンを下げて良いならリスクはどこまでも下げられるのです。
極端に言えば全て現金にすればリスクリターンはほぼ0になります。

この点で、ドルコスト平均法はリスクをリターンより大きく下げられないので、リスクを減らす効果が無いと言えるのです。
リターンが同じだけ下がるならば、わざわざリスクを下げる意味がありません。我々投資家はリスクを下げつつ、けれどもリターンは下げたくない強欲な存在なのですから。
しかし、これはとても難しい。なぜならローリスクハイリターンな金融商品は存在しないからです。

なぜローリスクハイリターンが存在しないのか

すこし整理すると、まずハイリスクローリターンな商品は誰も買いませんから詐欺を除いて存在しません。次にローリスクハイリターンは誰もが買いたがりますから生まれた瞬間に殺到します。それが希少なものなら直ぐに売り切れて市場から姿を消します。無限かあるいはたくさんあると市場原理によって価格は上昇し利回りは低下します。我々買う側からすれば安く買えれば嬉しいですが、逆に売る側からすれば安売りする理由は無いからです。
結果としてローリスクローリターンか、ハイリスクハイリターンのみが市場に残るのです。

我々が必死になって儲け話を探しても見付けられない事は個人的には悲しむことですが、社会を俯瞰すれば市場が効率的に機能している証拠でもあります。
そして詐欺師は未公開株や限られた人間しか知らない投資と語り、この効率的な市場を出し抜けるという幻想を売り込んできます。
その幻を信じたときに人は欺され、お金を失うのです。
だから市場を信じましょう。案外世の中は上手く回っていて、市場はしっかりと機能しています。
少なくとも、あなたが出会う「うまい話」の多くは、慎重に疑ってかかるべきものです。
なぜならば幸か不幸か市場の失敗は、詐欺師よりも少ないようなのです。

ドルコスト平均法の正しい使い方

話を戻します。
ドルコスト平均法はリスクを下げないことをこれまで説明してきました。

ではドルコスト平均法は無意味なのか。そうではありません。
リスクを下げる効果はありませんが、買値を平均値に近づける効果があります。この平均値に近づけるという効果は一見安く買えない欠点のように見えます。しかし、市場を予測することは不可能であるという有力な説を信じるならば、間違えて高値づかみをする確率を下げるという利点になるのです。
つまりドルコスト平均法は確実に50点を取ることができる方法です。そして市場ではその50点を取ることすら誰もが満足に出来ないのです。確かに50点は低いように見えますが、株式市場において平均点が45点ということもまたよくある事です。それならば、確実に平均以上の成果を出せるという効果は予測困難な株式市場において強力な効果である事がお分かり頂けるのではと思います。

次にこれは正確にはドルコスト平均法の利点とは言えませんが、定期的な買い入れを行う構造上、着実な資産形成に役立ちます。
100万円貯めてから一括投資をしようとしても、人間はなかなか貯められません。ですが月に1万円、あるいは1000円から積み立てるのはずっと簡単です。
もし100万円が貯められなかったとしても、1000円から積立を始めていればそれは1万円10万円になっていることでしょう。あるいは積もり積もって100万円になるかもしれません。
また、積立を始めた初心者は結果的に運用資産を少なく出来るので、市場の変動や様々な罠と誘惑に負けても損失を抑える効果も期待できます。
時間が初心者を成長させると共に、その運用資産も成長させるのです。

ドルコスト平均法はリスクを下げないが

これまでドルコスト平均法とはなにかから、リスクを下げるという誤解、そしてそれでも残るドルコスト平均法の利点について説明してきました。
ドルコスト平均法自体は有用な方法です。それは既に述べたとおり50点の買い方を確実に出来る手法であり、副次的に積立としてこれから投資を始める人に向いている手法でもあります。
しかし、なぜかドルコスト平均法がリスクを下げるという誤解が広く広がり、その有害性が無視できなくなっています。リスクへの誤解は運用全体の危機であり、大切なお金を失う理由になります。
お金は自由と同じではありませんが、しかし自由にとって大切な要素です。投資の失敗によって貴方のお金が失われるということは、結果として貴方の自由を減らすことにもなるのです。
これまで説明してきたことからドルコスト平均法を正しく理解し資産運用に有効に活用して皆さんの自由と幸福に役立ててほしいと願っています。

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